株式会社スタメンで、カスタマーサクセス責任者(VP of Customer Success)を務めている山田です。
私たちが、お客様の組織改善支援を始めるとき、最初に何から着手をしているのか。
その答えが「理想の組織像(TO-BE)を描くこと」です。
ビジネスにおいて一見当たり前に思えるかもしれませんが、この“最初の一歩”を丁寧にできるかどうかで、その後の成果は大きく変わります。
なぜ最初にTO-BEを描くのか
組織改善のプロジェクトは、進めば進むほど施策や論点が増え、方向性がブレやすくなる傾向があります。
現状(AS-IS)把握だけだと「やることリスト」が散らかってしまい、成果が出ないまま終わってしまうことも少なくありません。(手段が目的化してしまうというのがこれに近いかと思います。)
例えば…
- 情報共有の仕組みだけ整えても、文化は育たない
- 表彰制度だけ導入しても、称賛の習慣が根付かない
こうした“場当たり的な対応”を防ぐために、まず「理想の組織像(TO-BE)」を描くことが不可欠だと考えてます。
100社あれば100通りの理想像があり、事業フェーズ・経営方針・カルチャー・現場の温度感も異なります。
TO-BEは、その企業にとっての組織改善の地図であり、進むべき方向を示す北極星のような存在です。
これがあることで見当違いな意思決定をしてしまうこともなくなると思ってます。
※会社全体の北極星は経営理念だと思いますが、ここでいうTO-BEは「組織改善における北極星」です。

TO-BEを描く3ステップ
1. キーワードを抽出する
経営理念・バリュー・事業戦略・現場の声などから、その組織らしさを表す言葉を拾い出します。
営業の商談記録も文字起こしして体系的に整理し、導入直後のヒアリングと突き合わせて輪郭を明確化。
これにより「経営の言葉」と「現場の肌感覚」を同じ土俵で語れるようになります。
2. 未来のシーンを想像する
「〇〇になったら、1年後に社員がこんな会話をしている」など、行動や情景レベルで描き掘り下げます。
導入直後から「それってどういう状態ですか?」などと深掘りし、曖昧な理想を具体的な行動・習慣に落とし込んでいくことがポイントです。
3. 数値と感覚の両面で定義する
エンゲージメントスコアなどの定量指標と、空気感や感情変化といった定性要素をセットで描きます。
さらに、中長期でどんなインパクトを出したいか(離職低減・生産性向上・コスト削減など)まで擦り合わせます。
これにより、途中の進捗確認や振り返りの精度が上がります。
TO-BEからAS-ISを逆算する
理想(TO-BE)が定まると、現状(AS-IS)の把握も具体的になります。
「何が足りないのか」「何をやめるべきか」が明確になり、優先順位がブレませんし、意思決定における軸もでき、施策に一貫性が生まれます。
※理想があるのとないのでは、提案内容も取り組みも大きく変わってきます。
例
- TO-BE:「称賛が自然に飛び交う文化」
- AS-IS:称賛制度はあるが利用率が低い
→ 称賛のきっかけを増やす施策から着手
逆にTO-BEを定めずに進めると、施策が点在し、短期的な成果は出ても中長期では文化に定着せず、プロジェクト全体の効果が薄れてしまいます。
「ワークショップ」という共通言語づくり
理想(TO-BE)と現状(AS-IS)を整理する際に、ワークショップを行うことがあります。
その際は以下のようなフレームワークを活用し、経営・現場双方の目線を揃えたうえで目標設計まで行います。
- 理想の組織像(TO-BE)
- 現状(AS-IS)
- 理想に向けた重要な組織課題
- 施策の役割
- 施策を通じて実現したいこと
この整理を行うことで、情報や単発施策の寄せ集めではなく、理想像から逆算された筋の通った改善ロードマップを描けるようになります。
ここでつくる共通言語は、その後の施策設計・意思決定の軸になります。
離職率10%超改善につながった TO-BEの事例
ある物流企業では、離職率の高さや承認文化の欠如、経営メッセージの不達が課題でした。
営業時に得た背景を元に、導入直後に経営陣・現場双方からキーワードをヒアリングし、理想(TO-BE)を言語化。
- TO-BE:「前向きに良くしていこうとする文化」「自発的貢献意欲の向上」
- AS-IS:情報伝達の齟齬、称賛機会の不足
この差分を埋めるために、経営発信・福利厚生の見える化・称賛制度の運用を段階的に実施しました。
その後トライアンドエラーを繰り返した結果、現場と経営の距離が縮まり、感謝ややりがいの声が自然に生まれるようになりました。
さらに「もっとこうしたい!」という前向きなアクションが現場から次々と生まれ、ポジティブなコミュニケーションの定着→サーベイスコアの改善→離職率10%超の大幅改善に繋がりました。
責任者が本来業務に集中できる時間も確保されるなど、好循環が生まれたのです。
これは、単に経営からのメッセージ発信に頼ったものではなく、現場の習慣(日常)にどう落とし込み、会社としてどのように習慣を変革していくかを徹底的に考えアクションし続けた結果だと感じています。
(私たちはこういった事例を1つでも多く生んでいきたい。)
理想(TO-BE)は、組織改善の地図であり北極星のような存在です。
現状(AS-IS)の把握だけでは、施策が場当たり的になり方向が散らかります。
そして、ワークショップは単なる情報収集の場ではなく、“共通言語”をつくり、経営と現場の意識を揃えるための対話の場でもあります。
ここで得られる共通認識こそが、その後の支援や施策の成否を大きく左右します。
「TO-BEを描く」というステップは、私たちが行なっている支援において最も重要な“起点”です。
ここで理想像を明確にできるかどうかが、その後のロードマップの精度や施策の一貫性を決めるといっても過言ではありません。
組織改善は日々の習慣づくりの積み重ねですが、その第一歩をどこに置くかで、数年後の景色はまったく変わってくることでしょう。
次回は、このTO-BEをもとに組織フェーズをどう見立て、どのように組織づくりを支援していくのか──私たちが日々活用している「四象限マトリクス」をご紹介します。

